カモガヤ花粉症とは?初夏の咳・鼻水・喘息悪化との関係

カモガヤ花粉症による初夏の咳や喘息症状を表した医療イラスト

外来では、スギやヒノキ花粉の時期が過ぎたあとに、
「5月ごろから鼻水や咳が続く」
「公園や河川敷に行くと症状が出る」
と相談されることがあります。
その原因の一つとして考えられるのが、カモガヤ花粉症です。

花粉症というとスギの印象が強いですが、初夏にはイネ科植物の花粉が原因で、鼻炎や咳、喘息症状が悪化することがあります。「風邪が長引いているのか、花粉なのか分からない」と不安になる方も少なくありません。

よくある質問:カモガヤはどんな植物ですか?

カモガヤの見た目・生えている場所・飛散時期

カモガヤは、イネ科の多年草で、英語では orchard grass、学名は Dactylis glomerata と呼ばれます。草丈は比較的高く、細長い葉を持ち、穂先に小さな花が集まったような形をしています。もともとは牧草として利用され、日本では河川敷、公園、空き地、道路脇、草地など身近な場所にも見られます。国立環境研究所の情報でも、カモガヤは日本国内の広い地域に分布し、花粉が花粉症の原因になることが示されています。

花粉の時期は地域差がありますが、一般に5〜7月ごろが中心です。日暮里・荒川区周辺でも、河川敷や公園、線路沿い、空き地などの草地に近づいたあとに症状が出る方では、イネ科花粉の関与を考えることがあります。

スギ花粉は遠くまで飛びやすい一方、イネ科花粉は比較的近距離で影響しやすいとされます。イネ科花粉の飛散範囲は数十m程度とされています。
「カモガヤが近くにあることに気づかず、草地に近づいて症状が出る」ということが起こりやすいのです。

また、イネ科花粉は種類が多く、カモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤなどの間でアレルゲンが似ているため、交差反応を起こすことがあります。つまり、カモガヤだけでなく、複数のイネ科花粉に反応する場合があります。

カモガヤ花粉症は医学的に報告されていますか?

カモガヤ花粉症は、医学的にも報告されています。日本人家族を対象にした研究では、カモガヤ感作を伴う小児の季節性アレルギー性鼻炎について、ゲノムワイド連鎖解析が行われています(1)。これは、カモガヤ花粉症が単なる俗称ではなく、研究対象となるアレルギー性疾患(アレルギー性鼻炎)であることを示しています。

また、カモガヤ花粉に含まれるアレルゲンも研究されています。たとえば、Dactylis glomerata 由来の主要アレルゲンである Dac g 4 について、精製や免疫学的な特徴が報告されています(2)
このように、カモガヤ花粉症は「なんとなく草で鼻が出る」というだけではなく、IgEを介したアレルギー反応として理解されています。

カモガヤ花粉症の患者数はどのくらい?

日本で「カモガヤ花粉症だけ」の正確な全国患者数は、はっきり分かっていません。ただし、スギ以外の花粉症が増えていることは疫学調査から示されています。

「鼻アレルギーの全国疫学調査2019」では、耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした調査で、**2019年のスギ以外の花粉症の有病率は25.1%**と報告されています(3)。この調査は一般住民の無作為抽出ではない点に注意が必要ですが、スギ以外の花粉症が決してまれではないことを示す参考になります。

この「スギ以外」には、ヒノキ、イネ科、ブタクサ、ヨモギ、シラカンバなどが含まれます。そのため25.1%をそのままカモガヤ花粉症の割合とは言えませんが、カモガヤを含むイネ科花粉症は、初夏の鼻炎・咳の原因として見逃せない存在です。

カモガヤ花粉症は喘息に影響しますか?

喘息のある方では、花粉症の時期に咳、痰、息苦しさ、喘鳴が悪化することがあります。海外では、grass pollen、つまりイネ科花粉が喘息増悪に関係するという報告があります。

小児・思春期の喘息救急受診を調べたシステマティックレビュー(4)では、草本花粉への曝露が小児喘息増悪による救急受診の重要な誘因になり得ると結論づけられています。
また、草本花粉10 grains/m³の増加により、小児喘息入院が3%増加したとするメタ解析(5)もあります。

さらに、草本花粉免疫療法のランダム化比較試験では、季節性鼻炎だけでなく、季節性の胸部症状や気道過敏性も改善したと報告されています(6)
これらを踏まえると、少なくとも海外の疫学では、イネ科花粉は喘息発作・救急受診・入院リスクを押し上げる環境因子と考えられます。

一方で、日本では、カモガヤ花粉そのものと喘息悪化を直接結びつけた大規模研究は多くありません。そのため、「日本でも同じ程度にリスクが上がる」と断定はできません。ただ、5〜7月に鼻炎と咳・喘息症状が同時に悪化する方では、カモガヤを含むイネ科花粉を疑う価値があります。

呼吸器内科外来での実用的な見方

こんな症状ではカモガヤ花粉症を疑います

スギ・ヒノキ花粉の時期が過ぎたあと、5〜7月ごろに次のような症状が出る場合は、カモガヤ花粉症を考えます。

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • 目のかゆみ
  • のどの違和感
  • 咳が長引く
  • 痰がからむ
  • 息苦しい
  • ゼーゼーする
  • 発作用の吸入薬の使用回数が増える

特に、公園、河川敷、空き地、草むら、ゴルフ場、草刈り後の場所で悪化する場合は注意が必要です。

予防と治療

予防としては、イネ科雑草が多い場所に近づきすぎないことが大切です。カモガヤは見慣れた雑草のように見えるため、存在に気づかないことも多くあります。外出時はマスクや眼鏡を使い、帰宅後は手洗い、うがい、洗顔を行いましょう。草地に近い場所で服に花粉がついた可能性がある場合は、着替えも有効です。

治療は、抗ヒスタミン薬の内服、点鼻ステロイド薬、点眼薬などの対症療法が中心です。喘息を合併している方では、吸入薬の使い方や治療強度を確認することも大切です。

なお、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎では舌下免疫療法が行われていますが、カモガヤなどイネ科花粉症に対する舌下免疫療法は、日本では現時点で一般診療としては使えません。海外では草本花粉に対する舌下免疫療法の報告がありますが、日本では今後の導入が待たれる状況です。

まとめ:初夏の咳や鼻炎も、原因を整理して考えましょう

カモガヤ花粉症は、スギ花粉症ほど有名ではありませんが、初夏の鼻炎、目のかゆみ、のどの違和感、長引く咳の原因になることがあります。特に喘息のある方では、花粉症が重なることで咳や息苦しさが悪化することがあります。

「5月以降に毎年咳が出る」、「草地に行くと症状が悪くなる」、「鼻炎と喘息が同時に悪化する」という場合は、風邪だけでなく花粉症や喘息コントロールの問題も考える必要があります。日暮里・荒川区周辺で生活していても、公園や河川敷、空き地など身近な場所でイネ科花粉に触れる機会はあります。

症状が長引くときは、一人で悩まず、アレルギーと呼吸器の両面から相談してみてください。

参考文献

(1) Yokouchi Y, et al. A genome-wide linkage analysis of orchard grass-sensitive childhood seasonal allergic rhinitis in Japanese families. Genes Immun. 2002.
(2) Leduc-Brodard V, et al. Characterization of Dac g 4, a major basic allergen from Dactylis glomerata pollen. J Allergy Clin Immunol. 1996.
(3) 松原篤, 他. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年,2008年との比較):速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2020;123(6):485-490.
(4) Erbas B, et al. Outdoor pollen is a trigger of child and adolescent asthma emergency department presentations: A systematic review and meta-analysis. Allergy. 2018.
(5) Shrestha SK, et al. Ambient pollen concentrations and asthma hospitalization in children and adolescents: A systematic review and meta-analysis. J Asthma. 2021 Sep;58(9):1155-1168.
(6) Walker SM, et al. Grass pollen immunotherapy for seasonal rhinitis and asthma: a randomized controlled trial. J Allergy Clin Immunol. 2001;107(1):87-93.

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。

※本文監修:ぜんそくと肺のクリニック 院長 井上 英樹 (日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医)

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