喘息患者の寿命は短いか?長いか?

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外来でよくあるご相談

外来で喘息患者さんの診療をしていると、「喘息があると寿命は短くなりますか?」と聞かれることがあります。ネットで強い表現の記事を見て、不安になって受診される方も少なくありません。
息苦しさや発作を経験すると、将来のことまで心配になるのは自然なことだと思います。

よくある質問・不安

患者さんが気にされるのは、たとえば次のような点です。

  • 喘息があると、一般の人より早く亡くなってしまうのか
  • 子どもの頃から喘息があると、大人になってからも不利なのか
  • 発作が少なければ、あまり気にしなくてよいのか
  • 咳や息切れがあるとき、どこまでを「様子見」にしてよいのか

こうした不安に対して、まず大切なのは、「喘息だから必ず寿命が短い」とは言えないということです。
一方で、コントロール不良の喘息や、ほかの呼吸器の病気を合併している場合は注意が必要です。

研究からわかっていること

成人では「少し不利」とする研究があります

フィンランドの成人を長く追跡した研究では、喘息のある人は、ない人に比べて全体の死亡リスクがやや高いという結果でした。15.6年追跡した研究(1)では調整後ハザード比が1.25、18年追跡の別の研究(2)では1.29でした。どちらも「大きく極端に短くなる」というより、長い経過でみるとやや不利という読み方が適切です。

ただし、差を広げるのは「喘息だけ」とは限りません

韓国の全国コホート(3)では、喘息のある人で全死亡リスクはやや高く、特に呼吸器関連の死亡が増えていました。ただし、この研究で重要なのは、COPD、肺炎、気管支拡張症、肺がんなどの合併があるとリスクがさらに上がるという点です。つまり、予後に影響するのは喘息の名前そのものだけではなく、合併症や背景因子も大きいと考えられます。

子どもや若い方でも「ゼロではない」が、過度に悲観する必要はありません

スウェーデンの大規模研究(4)では、小児から若年成人でも喘息群の全死亡リスクは非喘息群より高い結果でした。とはいえ、これは「若い喘息患者さんの多くが寿命を大きく縮める」という意味ではありません。実際には、重症度、発作の頻度、治療継続、生活環境などでかなり差が出ます。数字だけを見て必要以上に恐れるより、日々のコントロールを整えることが大切です。

では、何に注意したらよいのでしょうか

専門用語を使わずに言えば、喘息の予後に関わりやすいのは、**「炎症が続いているのに治療が足りていない状態」や、「発作を繰り返している状態」**です。また、喫煙、吸入薬の中断、COPDの合併、肺炎を起こしやすい状態なども見逃せません。

反対に、日頃の症状が落ち着いていて、定期的に治療を続け、増悪を繰り返していない方では、必要以上に悲観しなくてよいことも多いです。喘息は「あるかないか」だけで将来が決まる病気ではなく、どのくらい安定しているかがとても大切です。

外来で実際によくある補足

診療の現場では、「最近発作はないので、もう吸入はやめても大丈夫でしょうか」と相談されることがあります。ですが、症状が少ない時期でも気道の炎症が残っていることはあります。自己判断で治療を中断した後に、季節の変わり目や風邪をきっかけに悪化するケースは珍しくありません。通勤や通学で空気の乾燥、寒暖差、人混みの感染機会が重なる都市部の地域では、生活の中で症状が揺れやすい方もいます。

まとめ

今ある研究をふまえると、喘息患者さんの寿命は一般の人より少し不利とする報告はあるものの、喘息だから必ず寿命が短い、と単純には言えません。 特に大切なのは、発作を繰り返さないこと、治療を自己判断でやめないこと、COPDなどの合併症を見逃さないことです。咳や息切れが続く、夜間や早朝の症状が増えてきた、風邪のたびに長引くという場合は、一人で悩まず早めに相談してください。

参考文献

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。

本文監修:ぜんそくと肺のクリニック 院長 井上 英樹 (日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医)

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