花粉症の季節になると、喘息をお持ちの方からの相談が増えます
春の花粉シーズンになると、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった花粉症の症状でつらい思いをされる方が多くなります。呼吸器内科の外来でも、喘息をお持ちの患者さんが花粉症を合併するケースは少なくありません。
この時期になるとよく聞かれるのが、
「喘息がある場合、花粉症の治療は普通の人と違うのですか?」
という質問です。
花粉症の症状が強くなると、咳が出やすくなったり、喘息の症状が悪化したりすることもあり、不安に感じる方も多いと思います。
よくある質問
喘息があると花粉症の治療は変わりますか?
結論から言うと、基本的な治療の考え方は一般のアレルギー性鼻炎と同じです。
ただし、喘息とアレルギー性鼻炎は同じアレルギー体質の病気であり、互いに影響しあうことがあります。そのため、鼻の症状と気管支の状態をあわせて考えながら治療を行うことが大切になります。
喘息と花粉症が関係する理由
鼻と気管支はつながっている
アレルギー性鼻炎は鼻の病気、喘息は気管支の病気ですが、実際には同じ気道の一部としてつながっている臓器です。
花粉などのアレルゲンが体に入ると、鼻の粘膜だけでなく気管支でもアレルギー反応が起こることがあります。そのため、花粉症が悪化すると、
- 咳が出やすくなる
- 喘息の症状が強くなる
といったことが起こる場合があります。
このように、鼻と気管支のアレルギーは互いに影響するため、最近では**「一つの気道の病気」として考える(One airway, one disease)**という考え方も広く知られています。
花粉症の基本的な治療
第2世代抗ヒスタミン薬
アレルギー性鼻炎の治療の中心となるのは、第2世代抗ヒスタミン薬です。花粉によって放出されるヒスタミンの働きを抑えることで、
- くしゃみ
- 鼻水
- 目のかゆみ
などの症状を軽減します。
抗ヒスタミン薬自体は喘息の治療薬ではありませんが、**エピナスチン(商品名:アレジオン)**など一部の薬は喘息の適応もあります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
モンテルカストやプランルカストといったロイコトリエン受容体拮抗薬は、アレルギー性鼻炎と喘息の両方で使用される薬です。
特に、
- 鼻づまりが強い
- 喘息もある
という方では有効性が期待されることがあります。
点鼻ステロイド薬
くしゃみや鼻水が強い場合には、**鼻噴霧用ステロイド(点鼻ステロイド)**を併用することもあります。
これは喘息の吸入ステロイドと同様に、炎症を抑える作用を鼻粘膜に局所的に働かせる薬です。
放置した場合の注意点
花粉症の症状が軽い場合には、市販薬で様子をみる方もいらっしゃいます。しかし、喘息をお持ちの方では、花粉症が悪化すると咳や息苦しさなどの呼吸器症状が強くなることがあります。
必ずしも重い病気につながるわけではありませんが、
- 花粉症の時期に咳が増える
- 喘息の発作が起こりやすくなる
といった場合には、治療の調整が必要になることがあります。
受診の目安(重要)
次のような場合には、医療機関での相談をおすすめします。
- 花粉症の時期に咳や息苦しさが増えている
- 市販薬で症状が十分に改善しない
- 鼻づまりが強く日常生活に支障がある
- 喘息の症状が以前より悪化している
一方で、軽い鼻症状のみで生活に大きな支障がない場合には、まず花粉症の一般的な治療で経過を見ることもあります。
日暮里・荒川区周辺でも、花粉シーズンには「花粉症と喘息の両方がつらい」という相談が増える傾向があります。
検査・治療について
医療機関では、
- 症状の確認
- 喘息の状態の評価
- 必要に応じた呼吸機能検査
などを行いながら治療を調整します。
症状が強い場合には、短期間の血管収縮薬や経口ステロイドが使われることもあります。ただし、これらの薬は副作用の面から長期使用は推奨されないため、耳鼻咽喉科や専門医の診察を受けながら使用することが望ましいとされています。
また、重症のアレルギー性鼻炎では、**生物学的製剤(オマリズマブ、商品名:ゾレア)**という注射薬が使用されることもあります。これは重症喘息にも効果が期待される薬ですが、使用にはいくつかの条件があり、専門医による判断が必要です。
根本的な治療:アレルゲン免疫療法
花粉症の対症療法とは別に、アレルゲン免疫療法という治療があります。
これはスギ花粉やダニに対するアレルギー体質を改善する治療です。ただし、スギ花粉の免疫療法は花粉飛散期には開始できません。新たに開始する場合は、花粉のシーズンが終わった6月以降に検討することになります。
鼻炎と喘息の考え方
「鼻は耳鼻科、喘息は呼吸器内科」と別々に考えられることが多いですが、実際には鼻と気管支は同じアレルギーの病態でつながっています。
そのため、鼻の症状だけを治療するのではなく、喘息の状態も含めて一つの気道の病気として総合的に治療することが症状の改善につながることがあります。
まとめ:花粉症と喘息は一緒に考えることが大切です
花粉症と喘息は同じアレルギー体質に関連する病気であり、互いに影響し合うことがあります。基本的な花粉症の治療は一般のアレルギー性鼻炎と大きく変わりませんが、喘息の状態も含めて総合的に評価することが大切です。
花粉症の時期に咳や息苦しさが気になる場合は、一人で悩まず医療機関で相談してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。
本文作成・監修:ぜんそくと肺のクリニック 院長 井上 英樹 (日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医)








