1. はじめに
「喘息なのに運動しても大丈夫なんでしょうか?」
これは、多くの喘息患者さんが抱える素朴な疑問です。息苦しさや咳といった症状があると、運動をすることが怖く感じられるのも無理はありません。しかし、実は喘息のある方でも、正しい知識と準備さえあれば、安全に運動を取り入れることが可能です。
この記事では、喘息と運動の関係についてわかりやすく解説しながら、喘息患者さんにおすすめの運動を5つご紹介します。体調と相談しながら、自分に合った運動習慣を見つけていきましょう。
2. 喘息と運動の関係
喘息は、気道(空気の通り道)に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなったり、過敏になったりする病気です。発作的に呼吸困難や咳、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー・ゼーゼーという音)が現れるのが特徴で、患者さんの多くは運動に対して不安を抱えています。
特に注意が必要なのが、「運動誘発性喘息(EIA)」と呼ばれる状態です。これは、運動によって気道が刺激され、一時的に狭くなることで症状が現れるもので、多くは運動開始後数分〜運動後に咳や息苦しさが出ます。気温が低い日や乾燥した空気の中での運動、急激な運動開始はリスクを高めます。
しかし実際には、適切な準備と管理のもとで運動を取り入れることで、喘息を悪化させるどころか、むしろコントロールの質を高める可能性があります。以下、詳しく説明します。
● 運動が喘息に与える良い影響
1. 呼吸筋の強化
呼吸筋とは「呼吸のために使う筋肉」で、以下の部位を含みます:
- 横隔膜:肺の下に位置し、息を吸いやすくする主力筋
- 肋間筋:胸郭を広げたり縮めたりする筋肉
- 胸鎖乳突筋・斜角筋:深い呼吸時に働く頸部の補助筋
- 腹筋群(腹直筋・腹斜筋など):咳や強い呼気で働く
ウォーキング・水泳・ヨガなどの有酸素運動は呼吸筋を自然に使うため、トレーニング効果が得られます。
2. 心肺機能の向上
軽度〜中等度の運動は心肺機能を高め、日常生活での息切れの軽減につながります。
3. 自律神経のバランス改善
適度な運動は交感神経と副交感神経のバランスを整え、発作の予防にも効果があります。
4. 精神的効果とQOLの向上
運動によって活動的になり、自信や生活の質(QOL)向上につながります。
3. 安全に運動を始めるためのポイント
- 主治医に相談: 運動前に吸入薬の使用を含め、医師に確認しましょう。
- 吸入薬を正しく使う: 必要に応じてSABA(短時間作用型β2刺激薬)を運動の15〜30分前に使用します(喘息が安定している場合は必ずしも必要ではありません)。
- ウォーミングアップとクールダウン: 運動前後に軽い動作やストレッチを行いましょう。
- 環境に注意: 寒さ、乾燥、花粉、黄砂は症状を悪化させる可能性があります。
- 無理をしない: 息切れや咳が出たら中止し、深呼吸で落ち着きましょう。
4. 喘息患者さんにおすすめの運動5選
4-1. ウォーキング
外でも室内でも可能で、呼吸への負担が少なく始めやすい運動。1回30分程度を目安に。
4-2. 水中運動・水泳
湿度と温度が安定しており、気道への刺激が少ないのがメリット。ただし、塩素に敏感な方はプールの種類に注意。
4-3. ヨガ・ストレッチ
自律神経を整える効果があり、自宅でも実施しやすいリラックス系の運動。
4-4. サイクリング(屋内バイク含む)
持久力アップに有効。屋外の場合、花粉の飛散時期や幹線道路沿いでは排気ガス対策としてマスクの併用をおすすめします。
4-5. ピラティス・軽い筋トレ
呼吸と姿勢の連動を意識した運動。体幹や基礎体力の維持に効果的。
5. 運動を習慣にするためのコツ
- 週2〜3回からスタート: 無理のない頻度で取り組みましょう。
- 記録する: 日記やアプリで運動と体調を記録すると継続しやすくなります。
- 楽しみながら: 音楽や動画を活用して、楽しく続ける工夫を。
6. 呼吸筋を鍛える!自宅でできる簡単トレーニング
▶ 腹式呼吸
- 鼻から息を吸い、お腹が膨らむのを意識
- 口をすぼめて「フー」と細く長く吐く
- 吸う:吐く = 3秒:6秒 が理想
▶ 口すぼめ呼吸(リップパース呼吸)
- 鼻から吸って、口を軽くすぼめてゆっくり「フー」と吐く
- 息切れの際にも役立つ呼吸法
▶ その他の呼吸筋トレーニング
- ストローで水に息を吹き込む「ぶくぶく」ブローイング訓練
- 「あー」「うー」など声を出してゆっくり息を吐く発声呼吸
- 呼吸筋トレーナーを医師の指導のもとで使用
7. まとめ
喘息があっても、運動は楽しめます。むしろ、運動は体力・呼吸機能・ストレス軽減などに役立ちます。
無理なく、自分の体と相談しながら、安心して続けることが大切です。
「どの運動が合っているかわからない」「運動中に息苦しくなる」などの不安がある方は、お気軽に当院にご相談ください。
運動を味方につけて、より元気な毎日を目指しましょう。