RSウイルス感染症について

RSウイルスの電子顕微鏡画像

風邪の原因ウイルスの一つであるRSウイルス。乳幼児や高齢者、免疫力が低下しているような方では重症化することもあります。RSウイルスワクチンであるアレックスビーが発売されたことは先日ご紹介いたしました(記事はこちら)。今回は、RSウイルス感染症についてまとめます。

RSウイルスは年齢を問わず繰り返し感染します

RSウイルスは、2歳までにほぼすべての子供が感染するとされる非常にありふれたウイルスです。一度切りではなく、その後も生涯に渡って何回も感染と発症を繰り返すとされています。

RSウイルス感染症は乳幼児の病気というイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、成人にも感染・発症を繰り返す病気です。正常な免疫力がある方の場合は自然治癒しますが、高齢者や基礎疾患がある方の場合問題となる場合があります。

具体的には、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD; 肺気腫、慢性気管支炎などを含む)などの呼吸器疾患、うっ血性心不全などの心疾患、糖尿病、慢性腎臓病などの慢性の基礎疾患がある方や、高齢者など免疫機能が低下しているような方においては、RSウイルス感染した場合に、肺炎などの合併症を起こす可能性が高くなります。

2005年にThe New England Journal of Medicineに報告された論文では、RSウイルス感染は、健康な高齢患者の3~7%、高リスク成人の4~10%で毎年発生したことが示されました(Falsey et al. N Engl J Med 2005; 352:1749-1759)。インフルエンザと同等の疾病負担があると論文では結論付けられています。

RSウイルスの感染経路ー飛沫・接触感染

RSウイルス感染症の感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

飛沫感染とは、咳やくしゃみをした時に飛び散る飛沫を吸い込むことで感染する病気の感染経路です。飛沫は、目に見えない小さな水滴のことで、感染者の口や鼻から飛び出し、数メートル程度飛ぶことがあります。イメージとしては、「風船を割った時に飛び出す小さな破片」、「スプレー缶から噴射される霧」が近いでしょう。

接触感染とは、感染者の体液や排泄物などが付着した物に触れることで感染する病気の感染経路です。イメージとしては、「風邪をひいている人が触ったドアノブを触る」、「ノロウイルスに感染している人の便が付着したトイレの床を触る」などが挙げられます。

RSウイルス感染経路としては、飛沫感染と接触感染ということですから、その予防としては、一般的な風邪の予防策である、「マスク着用」、「手洗い」、「うがい」が非常に大事であることがわかると思います。

RSウイルス感染症の症状は?

RSウイルス感染症は、乳幼児に重篤な肺炎を引き起こすことが有名です。ただ、乳幼児だけの病気かといえばそうではなく、すべての年齢層で感染症を引き起こす可能性があります。

成人の場合、免疫が十分ありますので、多くの場合軽症で風邪のような症状が現れます。成人のRSウイルス感染症は、通常数週間で自然に治癒します。しかし、高齢者や基礎疾患のある人は重症化するリスクが高くなります。

感染後の潜伏期間は、4-5日とされています。主な症状以下の通りです。

  • 鼻水
  • 発熱
  • 喉の痛み
  • 頭痛
  • 倦怠感
  • 筋肉痛

重症化する場合の症状

  • 呼吸困難
  • 喘鳴(ゼーゼーとなる呼吸音)
  • 胸痛
  • 血痰

RSウイルス感染を診断する方法ですが、外来診療では抗原迅速検査が簡便ですが、現在のところ1歳未満の子供のみ保険診療が認められています。

RSウイルス感染症の治療方法:基本は対症療法です

成人のRSウイルス感染症に対する特効薬はありません。治療は症状を緩和することに重点を置きます。

  • 発熱:解熱薬
  • 咳止め、去痰薬
  • 鼻水:鼻腔洗浄、鼻炎薬
  • 呼吸困難:低酸素血症がある症例では酸素投与
  • 水分補給:経口または静脈注射
  • 安静
  • 重症例:抗ウイルス薬、免疫グロブリン

高齢者や基礎疾患のある人は、重症化リスクが高いため、早めに医療機関を受診する必要があります。重症例では、抗ウイルス薬や免疫グロブリンの投与が検討されますが、専門医療機関での対応が必要です。

RSウイルス感染を予防する方法:手洗い、うがい、マスク着用。そして、ワクチン接種

RSウイルス感染を予防する方法ですが、これは一般の風邪と同じで、接触・飛沫感染を防ぐということにつきます。

  • 手洗い:石鹸と水で頻繁に手を洗いましょう。
  • 咳やくしゃみのエチケット:咳やくしゃみをする時は、ティッシュで口と鼻を覆い、使用後はすぐにティッシュを捨てましょう。
  • 接触を避ける:病気の人との濃厚接触を避けましょう。
  • マスクの着用:人混みや公共の場ではマスクを着用しましょう。

特に、高齢者や基礎疾患のある人は、これらの予防策を徹底することが重要です。

60歳以上の高齢者の方は、2024年1月から、RSウイルスワクチンであるアレックスビーの接種が可能となりました。現在のところ自費での接種となりますが、RSウイルス感染症の予防とそれに伴う肺炎の減少が期待されます。
高齢者の方や、特に喘息やCOPDなどの基礎疾患のお持ちの方は接種をおすすめします。

荒川区日暮里にある呼吸器内科クリニックであるぜんそくと肺のクリニックでは、RSウイルスワクチンであるアレックスビーの接種を行っております。お気軽にご相談ください。

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