吸入薬について(喘息、せき):吸入デバイスからみた分類

喘息・咳の吸入薬について|吸入デバイス一覧画像|ぜんそくと肺のクリニック

喘息や咳(せき)の治療に用いられる吸入薬はたくさんの種類があります。吸入薬はそれぞれの吸入器(吸入デバイス)によってその効果が左右されます。最近よく用いられる吸入デバイスに注目してまとめてみました。この記事をお読みの皆様の中でお使いの吸入薬があれば参考にしていただければと思います。

● エリプタ(レルベア®、テリルジー®、アニュイティ®)

1日1回1吸入のシンプルで使いやすいデバイス

1日1回1吸入タイプのシンプルな使い方ができる吸入デバイスです。吸入器の中に粉末(ドライパウダー)がセットされており、それを自身の吸気で吸い込むタイプです。デバイスについている蓋を右側にスライドして回転させると吸い口が出てきます。蓋を開けることでデバイス内に吸入剤が自動的にセットされるので、あとは、吸い口から吸って薬剤を吸入するだけです。薬剤は細かい粉状になっています。乳糖がわずかに混ざっていますので、吸入をすると少し甘味を感じると思います。

アニュイティは吸入ステロイド単剤が入っており、レルベアは吸入ステロイドと気管支拡張薬の配合吸入剤です。テリルジーは吸入ステロイドと気管支拡張薬、抗コリン薬の配合吸入剤となっています。

吸入後はしっかりうがいをしましょう

エリプタはシンプルなデバイスで最近は比較的良く処方されている吸入器です。注意点があるとすると、薬剤の粉末の薬剤粒子径が若干大きめなので、吸入後のどに付着したりして嗄声(させい:声のかすれ)が出ることがまれにあります。吸入後の声がれを防ぐために、吸入をした後はしっかりうがいをするようにしましょう。

あと、勢い余って思いっきり吸うとむせ込むことがあります。かといって吸い方が弱すぎるとしっかり薬剤が吸入できません。ちょうどいい吸い方がありますので、一度は、薬剤師から吸入指導を受けることをおススメします。

● タービュヘイラー(パルミコート®、シムビコート®)

即効性やコンパクト性などバランスのとれた吸入器

1日2回のドライパウダーの吸入器です。始めにデバイスの蓋をはずし、デバイスの下部にあるグリップを右に止まるまで1/4回転ほど回し、左に「カチッ」と音がするまで戻すと薬剤がデバイス内にセットされます。この状態で吸い込むことで薬剤の粉末が肺の中に送り込まれます。1回の吸入回数が医師から指示されますので、その回数を繰り返します。吸入ステロイドが含まれているので吸入後はしっかりうがいをしましょう。

タービュヘイラーで使われている吸入薬は薬剤の粒子径が小さいのでのどへの刺激が少ないとされています。喘息の中でも咳症状が強いかたには使いやすいデバイスです。また、気管支拡張剤であるホルモテロールは即効性がありますので、比較的すぐに効果がでてくる印象があります。

吸入デバイス自体もコンパクトになっているので、カバンの中にいれても邪魔にならず、日常生活で使いやすい吸入器です。

しっかり吸えているかの確認と動悸に注意

薬剤粒子径が小さくのどへの刺激が少ないのは良い点ですが、一方で、きちんと吸えているかどうかの確認がしづらいという欠点もあります。吸入後にデバイスを黒色の紙の上などでひっくり返して、薬剤の粉が落ちてくるようだと吸えていないことになります。また、吸入前にデバイスを回転させる動作が正しくできていないこともあります。一度は吸入指導を受けられることをお薦めしています。

また、シムビコートは朝夕の定期吸入の他に、追加吸入をすることもできるのですが、吸入回数が増えると気管支拡張薬の副作用である動悸が出ることがあります。

● ブリーズヘラー(アテキュラ®、エナジア®)

見て、聴いて確認できる吸入カプセル

1日1回タイプのドライパウダー製剤です。使い方が他の吸入デバイスとは大きく異なり、吸入薬剤の粉末が入ったカプセルをブリーズヘラーというデバイス内に入れて、カプセルに穴をあけた後吸い込むという操作が必要となります。他のデバイスは薬剤が自動的に充填されるので外からは見ることができないのですが、こちらのブリーズヘラーは吸入カプセルが透明で薬剤の粉末を外から見ることができ、吸入後吸ったかどうか確認できる点が優れています。

また吸ったときに吸入カプセルがデバイスの中で回転して「カラカラ」と音が鳴ります。この音が鳴れば、正しい吸入ができているという判断ができる吸入デバイスとなっています。

アテキュラについては吸入ステロイドの量によって、低用量、中用量、高用量と3段階に細かく調整できるところも患者さんの状態によって使い分けることができる良い点です。

逆に操作が煩雑な点も

上記の通り、「見て、聴いて」確認できるデバイスというのはメリットでもありますが、逆にそれがデメリットとなる場合もあります。吸入カプセルをデバイス内にいれるという動作が少し細かいですので、高齢者の方や細かい手作業が不自由な方にはおすすめできない場合があります。初めて使う場合は、医師・看護師・薬剤師による吸入指導を受けていただくことをおすすめいたします。

● レスピマット(スピリーバ®)

ミストタイプで吸いやすい

1日1回タイプのエアゾール製剤です。喘息の治療薬としては、抗コリン薬として処方をします。このレスピマットという特徴的なデバイスは、吸入薬剤をミスト上にゆっくり噴霧することでより確実に吸入できるというメリットがあります。のどへの刺激も少なく、咳が多い方にも使いやすいデバイスです。

使い方にやや癖がある

まず使い始めにデバイスに吸入缶をセットさせるという作業があります。これには少し力が必要なので、処方をうけた調剤薬局であらかじめセットしてもらうことをお薦めします。また吸入の時にデバイスを回転させる必要があるのですが、これも少し抵抗があり力をかける必要があります。高齢者の方などの場合は、ご家族などの介助が必要となる場合があります。あと、薬剤はゆっくり噴霧されるようにはなっているのですが、それでも噴霧後短時間で吸入する必要がありますので呼吸同調に注意が必要です。

● エアゾール製剤(フルティフォーム®、アドエア®、オルベスコ®、キュバール®、メプチン®、サルタノール®など)

スプレー缶を押して吸うだけのシンプルなデバイス

古くからあるスプレータイプの最もシンプルなデバイスです。スプレー缶を押すことで霧状になった薬液が噴霧され、それを吸い込むことで効果を発揮します。使いやすさという点では非常に直感的で使い方に迷うことはないと思います。

呼吸を同調させるのが難しい

エアゾール製剤は使い方は簡単なのですが、吸入器を噴霧したタイミングでうまく吸い込まなければならないという問題があります。噴霧したタイミングで呼吸を同調させなければなりません。
吸入器を噴霧したけれども、すっかり吸い込めていなかったり、咳が出てしまって肺に吸い込んでもすぐ外に出てしまったり、慣れない初めのうちは上手に吸入できていない可能性があります。
あと、スプレータイプですので薬剤は勢いよく「シュッ」と噴霧されます。その勢いでのどが刺激されて咳き込んだりするケースもありますので注意が必要です。

どの吸入デバイスでも一度は吸入指導を受けましょう!

病院やクリニックで吸入薬の処方がされると、調剤薬局で吸入薬の使い方のしおりなど頂くことが一般的です。丁寧な説明が書かれてありますので、じっくり読めば正しい使い方は身につきますが、使い方に慣れている人に教えてもらうとより確実に使うことができます。
はじめて使う吸入器で、少しでも不安を感じたらその場で使い方を聞くようにしましょう。薬剤師が丁寧に指導してくれますよ。

受診したクリニックが呼吸器内科の専門クリニックであれば、処方を受けたその場で医師や看護師が吸入指導してくれることもあります。高齢者や吸入の力が弱い方などで医療スタッフ側から吸入指導を受けるように言われることもあると思います。せっかく処方されたお薬でも使い方を間違ったり、うまく使えてなかったりすると、効果が半減します。最悪、全く効果が出ないこともあります。正しく吸入薬を使うことは喘息や咳の治療に非常に大切なポイントです。

ぜんそくと肺のクリニックでは吸入指導も行っています

東京都荒川区にある呼吸器内科クリニックのぜんそくと肺のクリニックでは、患者さんの症状・病状に合わせた吸入薬の処方を行っています。医師による説明の他、専任の看護師による吸入指導も行っています。ほぼすべての吸入デバイスの指導が可能ですので、今お使いの吸入薬でお困りのことがあれば何なりとお申し付けください。クリニックは日暮里駅徒歩3分にあり、上野からのアクセスも良好です。

遠慮なく積極的に吸入指導を受けていただき、咳や呼吸困難などのつらい呼吸器症状をしっかり治療していきましょう。

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