漢方薬も咳の治療として有効です
咳の治療というと一般的な咳止め(メジコン®など)が処方されることが多いです。
喘息の場合は、吸入ステロイド薬や吸入の気管支拡張薬が処方されます。
一方で、妊娠中や授乳中の方は、それらのお薬の処方を控えたいと思う方も多いでしょう。
また、できる限り薬に頼らず自然の力で治したいと思う方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、漢方薬も咳の治療の選択肢の1つとして有効です。
咳に有効な漢方薬
漢方薬の処方でも咳治療の基本的な考え方は同じです。
まず、咳がどれくらいの期間続いているのかを確認します。
そして、咳が出やすい時間帯や咳を引き起こす誘発因子、痰や鼻水の有無などを丁寧にお話を伺い、病状の把握に努めます。
もちろん、胸部レントゲン撮影や心電図検査を行い、肺炎や結核、肺癌、心不全など他の重大な病気が隠れていないか確認することを忘れてはいけません。
急性咳嗽
咳が出始めてから3週間未満の咳を急性咳嗽と言います。
風邪の引き始めの咳:葛根湯(かっこんとう)
風邪をひいた時に飲むお薬として市販薬としても処方されているので飲んだことがある方も多いでしょう。感冒初期、体力がある状態で飲む漢方薬です。病初期に飲むことで風邪をこじらせることを防ぎ、結果として咳を減らす効果が期待できます。
痰を伴わない空咳に:麦門冬湯(ばくもんどうとう)
感冒初期を過ぎて、咳だけが残ってしまった場合、麦門冬湯を処方することが多いです。もともと風邪をひいたときに咳が優位に出る方は初めから麦門冬湯を飲んでも良いでしょう。後に紹介する小青竜湯との違いは、痰があるか無いかで、麦門冬湯は痰が出ない乾いた咳(乾性咳嗽)に対して用いる漢方薬です。
痰や鼻水を伴う咳に:小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
咳の他に、痰が出たり、鼻水が出るような状態の時は、小青竜湯を処方します。痰や鼻水などの気道分泌物はそれ自体で咳を誘発してしまいます。痰や鼻水の流れを改善することで、咳が誘発されるのを和らげることができます。
遷延性咳嗽
咳が出始めてから、3週間以上、8週間未満の咳を遷延性咳嗽と言います。
切れない痰・しつこい痰:清肺湯(せいはいとう)
痰が切れずに咳が出る、痰が絡んでしまって咳がでるなどの慢性気管支炎症状がある場合で、かつ喫煙者や過去に喫煙されたことがある方には清肺湯を処方します。
ダスモック®として市販されています。
肺の中に余分にたまった痰をきれいにすることで咳症状を和らげる効果が期待できます。
のどに違和感を感じる、のどに痰が引っかかる:半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
痰や唾液がのどにつっかかる感じがあり、咳が出てしまう。のど(喉頭)に違和感があり、咳がでてしまう。会話したときにのどがつまり咳が出てしまう。
このような症状がある方に、半夏厚朴湯を処方します。
しかし、症状が長引く場合は喉頭ポリープができている場合もあるので、一度は耳鼻咽喉科で喉頭ファイバーなどによる検査を受けていただくことをお薦めしています。
食後の咳、胃のむかつき、逆流症状がある:六君子湯(りっくんしとう)
食後の咳は、胃酸逆流が関係している場合があります。
特に食後に胃がむかむかする、すっぱいもの(胃酸)がこみあげてくる、といった症状がある場合は、逆流性食道炎が存在している可能性があります。
逆流性食道炎に対しては、一般的にH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されますが、漢方薬治療をご希望される場合、六君子湯などの胃の働きを整える漢方薬を処方します。
慢性咳嗽
咳が出始めてから、8週間以上の咳を慢性咳嗽と言います。
実際は、8週間以上医療機関にかからず我慢されている方は少ないので、遷延性咳嗽と慢性咳嗽を一つにする考えもあります。
喘息との鑑別が必要です:柴朴湯(さいぼくとう)が有効な場合も
実臨床では、慢性咳嗽に対して漢方薬のみで治療するのは難しい印象です。
柴朴湯は気管支喘息に対しての効能もあり、一部効果がある方もおられます。
吸入薬と併用して用いることもありますが、専門医でしっかり診てもらう必要があります。
ぜんそくと肺のクリニックでは漢方による咳治療も行っています
東京・日暮里にあるぜんそくと肺のクリニックでは、胸部レントゲンや呼吸機能検査などの検査を適切に行ったうえで、漢方薬による咳の治療も行っています。
長引く咳や痰、鼻水でお困りの方で、内服や吸入薬での治療ではなく、自然の力を利用した漢方薬による治療を希望される方もお気軽にご相談ください。
荒川区日暮里にお越しになることが難しい遠方の方などで漢方治療の相談をされたい方などは、オンライン診療も可能です。