コロナウイルス感染症後遺症の定義
新型コロナウイルス感染症後に様々な後遺症を来すことが知られています。
WHOの定義によると新型コロナウイルスに罹患後、少なくとも2か月以上たったあとも症状が持続している状況を「post-COVID-19 condition」としています。
代表的な症状としては、疲労感・倦怠感、息切れ、咳、思考力や記憶力への影響が挙げられます。
現在のところ、特効薬というものは存在せず、それぞれの症状に合わせた専門科が対応しているのが現状です。例えば、息切れや咳については呼吸器内科。動悸や心不全、血栓症については循環器内科。しびれや疼痛については神経内科。不安、抑うつについては精神科などです。
ぜんそくと肺のクリニックでは、咳や息切れの患者さんが多く来院されます。
病状を詳しくお聞きすると、「実はコロナウイルスにかかりました・・・」という方が少なからずおられます。
新型コロナウイルス感染症後遺症:呼吸器症状の割合
厚生労働省から発刊されている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊罹患後症状のマネジメント第2.0版」によりますと、罹患後3か月の時点で呼吸困難を自覚されているのは30.2%、咳については約20%の方が自覚されていました。
呼吸機能検査では、肺活量が低下する拘束性換気障害が約10%、拡散障害が38%に認められました。
新型コロナウイルス感染症では間質性肺炎などの異常画像所見を認めますが、罹患後3か月では48.9%の患者さんが何らかの画像所見を持っていることが明らかになりました。
新型コロナウイルス感染症後遺症への対処方法
新型コロナウイルス感染症後遺症に対して、特効薬は存在しないのが現状です。
後遺症の症状に応じて、専門外来を受診しているケースが多いです。
新型コロナウイルス感染症後遺症を専門に謳っている医療機関もありますので、まずはそのようなクリニックを受診し、適切な専門科を紹介してもらう流れとなります。
コロナウイルスに罹患後、咳や呼吸困難、痰が長引く場合は呼吸器内科クリニックを受診しましょう。
新型コロナウイルス感染症後遺症に対して当院でできること
まず丁寧に患者さんからお話をお伺いして病歴や症状の把握に努めます。
聴診を行うことで喘鳴や捻髪音の有無を確認します。
その後、胸部レントゲンを施行し、肺炎像の有無を確認します。
胸部CTが必要と判断されれば、当院の近隣にある画像診断クリニックへの受診を手配します。
また直ちに処置が必要な低酸素血症や肺炎像があれば、速やかに連携高次医療機関に連絡し搬送の手配を行います。
急性期の状態でなければ、当院において呼気NO検査や呼吸機能検査、呼吸抵抗測定(モストグラフ)を行い、気道炎症の有無、気流障害の評価を行います。
咳が長引いて、閉塞性気流障害がある場合はぜんそく発症の可能性も考えて、吸入ステロイドの処方などを検討します。
胸部レントゲンやCTで器質化肺炎などの間質性肺炎像があり、低酸素血症を伴う場合は、プレドニゾロンなどの全身性ステロイドの処方を検討します。
尚、咳嗽症状に対して、デキストロメトルファンやコデインリン酸塩散などの一般的な鎮咳薬を処方することもありますが、効果は限定的なことが多い印象です。
一方、後遺症の症状や呼吸機能は、ともに経時的に改善を認めることも明らかになっています。
過剰な投薬に頼らず、定期的に診察を行い、患者さんの不安に寄り添いながら継続した診療を行うことも大事であると考えています。
新型コロナウイルス感染症罹患後、呼吸器症状でお悩みの方がいらしたら、是非お気軽に当院にお越しください。