間質性肺炎とは
肺炎球菌などによる細菌性肺炎と違って、間質性肺炎といってもピンとこない方が多いと思います。一方で新型コロナウイルス感染症による肺炎が間質性肺炎を来すことから、名前だけは聞いたことがある方も多いかもしれません。間質性肺炎という名前の由来を知るには肺の解剖学的構造を知る必要があります。
間質とはどこのこと?
ざっとしたイメージですが、肺は2つの領域に分かれます。
- 空気が入るスペース(肺胞)
- それ以外のスペース(間質)
の2つです。
肺胞には外からの空気が入ってきます。それと同時に異物や細菌が侵入してきます。通常はそれらの異物は、肺の線毛運動で外に運ばれたり免疫細胞がやっつけたりして問題とはなりません。ですが、線毛運動や免疫機能が低下すると肺胞の中で細菌が増える結果となります。これが、細菌性肺炎の原因となります。
一方、間質は直接外気と触れ合っているわけではないので、細菌が侵入するのは稀です。間質には血管やリンパ管が通っており、血管やリンパ管から運ばれてきた免疫細胞がたくさんいます。これらの免疫細胞は炎症を引き起こすことで外からの異物をやっつける働きがある大事な細胞なわけですが、何かしらのきっかけで免疫細胞のバランスが崩れて異物を排除する以上に免疫細胞が炎症を起こすことがあります。この肺の間質での異常な炎症が間質性肺炎の主な病態となります。
間質性肺炎の原因は?
自分の体の免疫細胞が引き起こす炎症ですから、その原因はたくさんあります。
免疫細胞であるリンパ球や好酸球が異常に増える間質性肺炎もあれば、関節リウマチやSLEなどの膠原病といわれる病気に合併する間質性肺炎もあります。空気中にただよう羽毛や鳥の糞に過剰に反応する結果、引き起こされる過敏性肺炎という間質性肺炎もあります。また、薬のアレルギーなどで引き起こされる薬剤性の間質性肺炎も時々みられます。
一方で、このように原因がはっきりしている間質性肺炎は少なく、原因が不明である間質性肺炎の方が多く、その場合は特発性間質性肺炎と診断されます。
新型コロナウイルス感染症と間質性肺炎
それでは、感染症であるコロナウイルス肺炎はどうして間質で炎症を起こすのでしょうか?
ここまでの話の流れで、細菌などによる感染症は肺胞で起こるとお話ししました。一方、ウイルスは細菌とは異なり、それ単体では維持・増殖することができません。体の中では細胞内に侵入しないと生きていけません(ウイルスが生物なのかはまた別の議論ですが)。つまり、大部分のウイルスは肺胞内では増えずに気道上皮細胞や間質にある細胞内で増殖します。もちろん、炎症が非常に強く起こると肺胞内にも炎症細胞が増えてきますので、そこでウイルスも増殖するでしょう。しかし、基本的にはウイルスは間質で増殖し、ウイルスが増殖した細胞は人体にとっては異物ですので、間質に存在する炎症細胞によって認識され排除されます。これが、炎症となって間質性肺炎となるわけです。
このように、一言で肺炎といっても、炎症が起こる場所によって全く異なる病態であることがわかると思います。新型コロナウイルスの話題が絶えない今日この頃ですが、コロナウイルス肺炎によって引き起こされる間質性肺炎という疾患についても興味をもっていただければさいわいです。