非結核性抗酸菌症は、結核に類似した菌である非結核性抗酸菌による感染症です。英語でNTM(nontuberculous mycobacterium)と略されます。肺に病変を来すことが多く、その場合は肺非結核性抗酸菌症となります。
中年以上の女性に多いことが特徴的で、健診などの胸部異常陰影で初めて指摘される方が最近は増えている印象です。症状としては、咳、痰、微熱、体重減少が認められます。肺非結核性抗酸菌症の原因菌として、M. avium(マイコバクテリウム・アビウム)やM. intracellulare(マイコバクテリウム・イントラセルラーレ)が多く、この二つを合わせてM. avium complexといい、その頭文字から肺MAC症(ハイマックショウ)と呼ばれることもあります。非結核性抗酸菌症は土壌中や浴室の水廻りに生息している菌です。シャワーヘッドや排水溝などから分離されることが多いとされます。結核とは異なり、他人に感染させる病気ではないので安心してください。
肺MAC症の方は、胸部CTで特徴的な所見があります。中葉舌区という肺の真ん中あたりの部分に結節影や気管支拡張の変化が見られます。確定診断としては、喀痰検査で2回以上、菌が検出されることが必要です。最近は、血液検査で抗MAC抗体を測定することもでき補助診断としてよく用いられるようになりました。
治療としては、結核薬として用いられる抗結核薬を複数内服します。代表的な治療薬として、クラリスロマイシン、エタンブトール、リファンピシンの3種類の薬が使われます。肝障害や視神経障害が出ることがあるので十分に注意をして治療を行います。治療期間は喀痰から菌が出なくなってから1年間とされており、全体の治療期間として2年くらい内服しているケースも見られます。肺MAC症全例に薬物治療が必要というわけではなく、肺の陰影が軽度で、症状が無い場合は、投薬治療を行わず定期的な画像撮影で経過を見る場合もあります。